院長からのご挨拶

宮本町中央診療所



クラミジアの感染原因 
「暮らしと健康」2003年2月1日(保健同人社)

Q クラミジアと診断されたが原因がわからない
27歳、女性。1か月ほど前から、おりものが多く、2週間ほど前に膣内に膿をもったできものが見つかったため、婦人科で検査を受けました。検査結果からクラミジアと診断されたのですが、感染した原因がわかりません。クラミジアは、セックスによってのみ感染すると聞きます。しかし、私は彼氏以外の人とはセックスをしていませんし、彼自身は、クラミジアには感染していないといいます。セックス以外の感染原因は絶対にないのでしょうか。
(広島県 A・S)

A 過去に現在のパートナー以外との性的接触がなければパートナーが感染原因となる。

クラミジア感染症とはクラミジア・トラコマティス(CT)による感染症のことをいいます。

CTはヒトの細胞に寄生して増殖していく、かなり微小な細菌です。クラミジア感染症は、診断技術の進歩により1985年頃から注目され、現在もっとも多い性感染症であり、その50%近くを占めます。ですから、性感染症はまさに「クラミジア時代」ともいえます。10歳代後半から、20歳代、30歳代のもっとも性活動の盛んな年代に多く、とくに女性は男性の2倍以上も多く見られます。

CTは非常に弱い菌でヒトのからだからでると長く生きていられませんから、性的接触以外ではほとんど感染しません。感染ルートとしては通常の(ちつ)性交によりCTが男性尿道と子宮頸菅の間を感染しあったり、そのほかに口腔性交により咽頭(いんとう)に感染して感染源になったり、肛門性交により直腸にも感染することがあります。

さらにCTを含む分泌物が手指を介して結膜に感染すると、クラミジア性封入体結膜炎を発症することがあります。

症状としては女性では帯下(たいげ)(おりもの)増量、不正出血、下腹痛、性交痛などですが、80%近くの人がまったく症状を感じないともいわれています。男性では尿道から分泌物を認めます。しかし、その量は少なく排尿痛も軽い場合が多く(軽い尿道のかゆみや不快感といった程度)、しかしも約50%の人は症状がでません。

相談者の場合は、帯下の増量に気づき、婦人科でクラミジアと診断され治療に結びついたわけですから、幸運だったと考えてください。気づかないでいると子宮頸管炎から卵管炎を生じ子宮外妊娠の原因や不妊症につながる危険性があります。

さて、問題の感染原因ですが、相談者の過去に、現在のパートナー以外との性的接触がなければパートナーが感染原因となります。しかし、CTは長期間陰性化せず感染源となりえますから、相談者の過去に現在のパートナー以外との性的接触があれば、それが感染原因となる可能性があります。そうなると相談者自身がパートナーの感染源になる可能性がでてきます。

一方、パートナーはクラミジアに感染していないということですが、パートナーの申告だけでは確かではありません。パートナーには次の3つの状態が想定できます。
1.感染していない。
2.感染しているが無症状で気づいていない。
3.すでに内緒で治療が終わっている。

これらのことをはっきりさせたいのであれば一度、2人で性感染症の専門医を受診することをおすすめします。2人とも血液(クラミジア抗体)検査を受け、過去にCTに感染したかどうかはっきりさせてはいかがでしょう。抗体の陽性は感染後、数年間は持続し感染したことを表すと考えられています。

もちろん、パートナーは抗原検査も受け、現在の感染の有無を確認し、たとえ抗原が陰性でも未治療であれば必ず治療を受けましょう。検査の結果は、検査法の精度管理上の問題点もあり、矛盾する結果がでてきて納得のいくものではないかもしれません。

最後に、2人とも治療後は、必ず治癒(ちゆ)判定の検査を受けてください。相談者とパートナーの将来には結婚、妊娠、出産という人生の大事業がひかえているわけですから、まずは健康になり、健康なセックスを心がけましょう。


回答者
宮本町中央診療所 泌尿器科・皮膚科院長
尾上泰彦