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梅毒の抗体があると診断された 「暮しと健康」2002年1月1日 (保健同人社)
Q | 治療を受ければ梅毒の抗体反応は(+)から(−)にもどるのか |
45歳の男性です。現在独身ですが、結婚を考えています。 先日、ポイント人間ドックで「梅毒の抗体があります。TPHA(+)」といわれました。私は、10年以上風俗に行っていませんし、誰とも性交はもっていません。 2年前に検査した際は、結果はガラス板法定性でもTPHA定性でも(−)でした。現段階において、TPHA(+)だと、梅毒の治療を受ける必要があるのでしょうか。治療を受ければ(−)に戻るのでしょうか。 また、今のままでは、結婚相手と子どもへの影響があるのでしょうか。梅毒の再発のため今後とも定期的な検査が必要でしょうか。よろしくお願いします。 (神奈川県 M・W) |
A | 抗体反応はもとにはもどらない。適切な治療をすれば再発はしない。 |
結婚を前にして予想もしていなかった結果がでて、たいへん悩まれていると思います。ご相談の内容から判断しますと人間ドックで偶然発見された潜伏 あなたは10年以上、風俗嬢との接触もないし、誰とも性交をもっていないそうですが、いわゆる性交以外でも梅毒の感染はおこりえます。たとえば唇や また、先天性梅毒児とスキンシップしたことで感染した例もあります。ほかに輸血で感染する例もあります。献血による輸血の場合は、梅毒血清反応を行い、病原体が死滅するように長時間冷蔵してから患者に輸血されるので感染の心配はありませんが、新鮮血輸血による場合は感染することがまれにあります。 きわめてまれなものでは、食器、パイプ、タバコなどを介して感染した例も報告されています。あなたは医療従事者ではないと思いますが、もしそうであれば、患者との接触、採血時の針刺し事故などえも考えなければなりません。 2年前に検査した結果は、ガラス板法定性でもTPHA定性でも(−)でしたから、この2年間に感染が成立する出来事があったのでしょう。何か思い当たることはありませんか。もしあるとすれば、それはいつ頃だったのでしょうか。 感染して初めの2年間は早期梅毒といって他人にうつす感染力があります。誰かと性交渉をもてば、その人に迷惑をかける可能性があります。しかし、早期梅毒ですと早く治療を開始すれば治療効果も上がります。とくに感染して6か月以内に治療を開始できれば、さらに治療効果は上がり、抗体価は急速に低下するといわれています。 それに対し、感染したことに気づかずに、未治療期間が2年以上過ぎると、感染力は大幅に低下しますが、その反面、治療効果は上がらなくなり、治療後の抗体価の低下速度は鈍くなります。 「TPHA(+)になったものが治療を受ければ(−)にもどるか」とのおたずねですが、TPHAはごく初期に治療が行なわれた場合を除き、半永久的に(+)のまま残ります。梅毒は感染症ですから、抗生物質の治療によって抗原が死滅すれば しかしながら日本においては、現在でも梅毒に対する偏見が強く、治療後の血清反応陽性患者に対し、医療関係者さえ特別扱いや差別をする傾向が見られ、真に残念であり、反省しなければなりません。 「梅毒の再発」のおたずねですが、適切な治療を行えば、再発することはありません。しかしその後の定期的な診察、検査は必要です。 いずれにしても、一刻も早く専門医を受診して梅毒の有無と、もしあればその程度を判断してもらい、必要があれば適切な治療を開始することです。治療はむずかしいことではありません。一定期間(2〜4週間)、くすりを服用するだけです。 病気は必ず治ります。そうなれば、近い将来、結婚もできますし、子どもをつくることもできます。もちろん結婚相手と子どもへの影響はありません。未来の明るい幸せな家庭をめざして前進してください。 最後になりますが、人間ドックで病気を発見されたことは、不幸中の幸いです。早く治療できるからです。よかったとお考えください。 回答者
宮本町中央診療所 泌尿器科・皮膚科院長 尾上泰彦 |